【パワーストーリー】120

山崎豊子の小説『沈まぬ太陽』の中で忘れられない話しがある。
主人公が、アフリカで聞いた語り部の話。
その昔、ある青年が奴隷として村から連出され、知らない土地へ連れて行かれた。
途中、その船が難破して一人生き残り、なんとか同じ言葉を話す部族のもとに帰ってきた。しかし、村がどこにあるかわからない。わかるのはキリマンジャロの山が見えていたということだけ。
青年は何度も試みたが、ついに故郷は見つけられず、その村で奴隷狩りの恐ろしさを伝える語り部となった。

僕はそれを読んだとき
時代を経て、はるか異国の地までこの物語が届くなんて、すごいと思った。

やがて、
ストーリーというのは
胸に響き、人に伝わり、心に残る。
ということを知った。

そんなショッキングなことでなくとも
日常の中で物語、ストーリーは活きてくる。

それは僕が昔、
髙島屋で働いていたときのこと。

空いている時間で
デパート包装を教えてもらった。

どんな形の商品も
バラの印刷された
きれいな包み紙で包んでいく。
そして、最後に、
「髙島屋」という赤いテープでとめる。

それが出来るようになりたくて
何度も練習して、やってみた。

最後まで紙が
ゆるまず包むのは難しいので
途中透明のセロハンテープでとめた。

そしたら、河端くん!と止められた。

「こんなベタベタ、
セロハンテープでとめて!
ダメよー。
いい?
お客様がご自宅で開けるときを想像して。
「髙島屋」の赤いテープを
一枚はがしただけで
ヒラヒラヒラって包みが全部とれて
楽しみにしてた商品と出会えるの。
それが美しいんじゃない。」

お客様と商品の
出会いのストーリー。
これは僕の心に残った。
家でその瞬間がありありと連想出来た。

単に
セロハンテープは使っちゃダメよ。
って言われてたら
忘れてしまっていたかもしれない。

僕は今でもデパート包装の包みを
見るたびにそれを思い出す。


小さなことでも
ストーリーはあふれている。
作り出すことが出来る。

そして、多くの人に伝わるストーリーを
パワーストーリーという。

作り出そう!
発信しよう!
伝えよう!

あなた自身が語り部となって
ストーリーを紡いで行こう。