【フランス時間】134

学生時代、南フランスのイェールという港町にホームステイをしていた。ある休日、ポルクホール諸島という国立公園へ行くことにした。船の時間を調べると港を9時に出航する。港に向かうバスを調べると1番早くて8時25分発、8時55分着だった。ギリギリだが間に合う。
俺はその日早めに家を出て、バス停へと向かった。

バスに乗り込むと
運転手はまだ来ていなかった。
時間になっても、運転手は来ない。

たまりかねて探しに行くと
喫煙所でタバコを吸っていた。

「もう時間だよ」
「わかってるよ。待ってな」

しぶしぶバスに戻り
バスは結局5分遅れで出発した。

出発すると運転手は
自分の好きな音楽をかけだした。
自由かよ!

しばらく走っていると
反対車線に知り合いを見つけて、
「おおーい、○○!乗ってけよ」
バス停じゃないところで人乗せた。
自由かよ!

俺は心配になって、運転手に質問した。

「時間通りに着くんだろうな?」

「船に乗りたいんだろう」

「そうだ」

「任せときな」


不安は消えないが、乗ってるしかない。

結局バスは、港に
9時ちょうどに着いた。

「な?間に合っただろう?」

うるさいわ!と思ったけど
文句を言う暇もない。

運転手を尻目に、船へダッシュ!

チケットを買って
なんとか出航前に乗ることが出来た。

フランスのバスはどーなってんだ!

とプンプンしながら
外を見ていて、

しばらくしてから氣づいた。

船も全然出航しねー!!

ああ、これがフランス時間か。

日本に慣れすぎると

数分遅れただけでやきもきしちゃう。


たまには、

焦らず、

ゆっくりと、

フランス時間で、

心穏やかに過ごそうじゃないか。