【旅をする食事】164

僕は食事をするときに、旅をすることがある。食べ物がここまで来た旅の道のりを一緒に堪能するんだ。これは衛藤信之先生から教わった。

日本で育ったの?
それともはるか大陸の果てから
やってきたの?
機械化された巨大なプランターの中で
育ったの?
それとも日本の農家で
丹精込めて作られたの?
作った人は覚えてる?

どんな想いで作られて、加工され
商品化され、ここに来たんだろう?

それを想像しながら食事をすると
食べ物の向こう側が見えてくる。

歴史の旅をすることもある。

例えばホットドッグ食べながら思う。

ソーセージは移住者によって
ドイツからアメリカへ海を渡り

ケチャップの原料であるトマトは
500年前にアメリカ大陸から
ヨーロッパに渡ってきた。

海を反対側から渡った二つの食材が、
古代メソポタミアで原型が生まれ
エジプトで改良された
パンに挟まれて
日本へと伝わって来た。

ただのホットドッグに
なんてロマンチックなドラマが
あるのだろう。


耳を傾ければ、
命が今までのストーリーを
イメージさせてくれる。

その場にいながらでも
たった一度の食事で
歴史を、世界を、
旅することが出来るんだ。