218【一歩前】

学生時代は総合格闘技をやっていた。相手と間合いを取り合い、突き、蹴り、投げ、関節をキメて相手を制する。決めの一撃が入ると、「一本!」旗が上がり勝利を掴む。
打つことがあれば打たれることもある。
相手に間合いを盗まれた瞬間、
突きや蹴りが飛んでくる。
 
まずい!
打たれる!
拳は一瞬で顔面に迫ってくる。
 
もう
払うことも避けることも間に合わない。
 
それがわかった瞬間、
たった一つだけ逃げ道がある。
 
 
それは
前。
 
 
ぐっと前に出る。
 
 
そうすることで、
相手の腕が伸びきる前に拳が当たり
突きの威力を殺せる。
 
 
後ろに逃げたら
相手の腕が伸びきるので
勢いは殺せるんだけど、
重心が後ろにあるから
拳があたったときに首がはじかれてしまう。
 
そうすると
一本を取られてしまうんだ。
 
出る事で
受け止める重心と覚悟で
相手の拳を食らっても
揺るがない。
 
「不十分!」
決めの一撃にはならず
旗は上がらない。
 
 
ここはもう避けれない!
その瞬間
 
逃げ道は後ろではなく
一歩前にあるんだ。

217【インドの花】

20代前半、バックパッカーで旅をしていたとき、インドのヴァナラシで一人の少女と出会った。8歳か9歳くらいの物売りの女の子。花とロウソクをガンジス河に流しませんか。と売り歩いていた。
 
2ヶ月間東南アジアを旅をしていて、
正直物売りにはうんざりだった。
特にインドに入ってからはひどかった。
「バクシーシ、バクシーシ(お恵みを)」の嵐。
 
どうやってこの旅行者からお金を取ろうか
あの手この手を使ってくる。
向こうも生活かかってるから、
しつこさややり方が半端ない。
断るだけでも労力を使う。
 
もう辟易していた僕は
「お金は持ってない」とウソをついた。
ガンジス河を見に来ただけだから、
貴重品はホテルに全て置いて来た、と。
 
さすがに払うお金を持ってないなら、
その少女も諦めるだろう。
 
 
そう思ってたら、
少女はこう言った。
 
「あなたは遠くから
旅をして来たのでしょう。
これは私からのプレゼントです。」
 
そう言って売り物の花を一つ
プレゼントしてくれた。
 
 
僕は、あっけに取られた。
 
みんな、むさぼろうとしている人たち
だと思い込んでいたのに、
 
思いがけない優しさに
頭が止まってしまった。
 
 
実はお金を持っていることを
言い出せないまま、
もらったロウソクに火を灯して
ガンジス川に流した。
 
 
その後、僕はその少女を探したけど
見つからなかった。
その商売を取りまとめる
人にも会って
少女を探してるって言ったけど
わからなかった。
 
 
それからは
違う子どもに、同じ商品を売られたら
必ず買ってあげた。
 
2個買って、1個は自分に。
1個はその売っている子どもに。
これは「あなた自身のために」
と渡した。
 
その行いが、いつか
自分がウソをついた少女へ
届くよう祈りを込めて。
 
 
インドの喧騒の中で
いつしか荒んでしまった心。
 
その心を
少女は優しさで包んでくれた。
 
その子たちの売っている花は、
今日もガンジス河を流れている。

216【対話】

自信がなくて、一歩が踏み出せないときがあった。
そのとき自分の中で、どうしたらこの勇氣が湧くだろうって考えて、
学生の頃にうけた、サクセスサークルというのを思い出した。
未来の自分を想像して、体験してるように感じるというワークだった。
 
そうだ!
この自分が選ぶ未来の自分だったら、
解決してるはずだ。
よし、未来の自分に相談しよう!
 
思い立って、
人が来ない道の真ん中で、
対話を始めた。
 
今の自分が、未来の自分に相談する。
今の自分が言う番が終わったら
一歩進んで振り返って
未来の自分から今の自分に
アドバイスする。
 
それを
ずっと一人でやってみた。
 
今「僕、今自信がなくて
 一歩が踏み出せないんです。
 そういうときありましたか?」
 
未来「いやー、わかるよ。
 でも、今成幸した自分からみると
 そのときの一歩が
 すごく自分を変えたんだよね。」
 
今「でも一歩が踏み出せないんです」
 
未来「大丈夫。未来の俺を見てみろ。
 今成幸してるだろう?
 できるよ。というか今それがあるから今の俺があるんだ」
 
今「できた自分がいるんですね」
 
未来「そう、できた自分がいる。
 大丈夫、僕を信じて」
 
そんな会話をずっとしていた。
 
そうすると、自分の中で、
 
そうだよな。
できるよな。
よし!
って氣持ちが高まって行って
行動することが出来たんだ。
 
 
もしも、自分で悩んで
これきついな、無理だなって感じたとき、
 
未来の自分を連れて来てあげよう。
 
そして、
その未来の自分と対話しよう。
 
僕はこの方法で、
今の自分に、
ものすごい力をもらった。
 
 
未来の自分を味方につけること。
 
それが、
「今」の自分にできる力なんだ。

215【誰が見てるか】

人が見てないところでどれだけやっているかが大切だって言うよね。
影の努力は、誰も見ていないようで、誰かが見ている。
神様が見てるとか、お天道様が見てる
なんて言う
 
そんな中で、あなたのことを
一番見てる人がいる。
 
それは、
自分自身。
 
やってきたこと
重ねて来た時間
 
自分は全てを知っている。
自分がずっと見てたんだ。
 
これだけやってきたんだ。
これを乗り越えてきたんだ。
 
その日々が
自分を信じる力になるんだ。
 
誰が見てるか。
そう、自分が見てる。