218【一歩前】

学生時代は総合格闘技をやっていた。相手と間合いを取り合い、突き、蹴り、投げ、関節をキメて相手を制する。決めの一撃が入ると、「一本!」旗が上がり勝利を掴む。
打つことがあれば打たれることもある。
相手に間合いを盗まれた瞬間、
突きや蹴りが飛んでくる。
 
まずい!
打たれる!
拳は一瞬で顔面に迫ってくる。
 
もう
払うことも避けることも間に合わない。
 
それがわかった瞬間、
たった一つだけ逃げ道がある。
 
 
それは
前。
 
 
ぐっと前に出る。
 
 
そうすることで、
相手の腕が伸びきる前に拳が当たり
突きの威力を殺せる。
 
 
後ろに逃げたら
相手の腕が伸びきるので
勢いは殺せるんだけど、
重心が後ろにあるから
拳があたったときに首がはじかれてしまう。
 
そうすると
一本を取られてしまうんだ。
 
出る事で
受け止める重心と覚悟で
相手の拳を食らっても
揺るがない。
 
「不十分!」
決めの一撃にはならず
旗は上がらない。
 
 
ここはもう避けれない!
その瞬間
 
逃げ道は後ろではなく
一歩前にあるんだ。