263【さらに一歩】

先日、道を歩いてると、ちょっと外を歩くような格好ではないおばあさんが目に入った。キョロキョロして、ここがどこかわからないように見えた。ちょうど雨も降り出してきた。一度通り過ぎたが、氣になった。そのまま過ぎ去るか、戻って関わるか。もしも、その人が自力で帰れなくなってる人だったら、まずいかもしれない。僕は、一歩踏みだす選択をした。近づいて声をかける。
「大丈夫ですか?家わかりますか?」
うん、うん、と頷く。

そうか、わかってるなら大丈夫か。
そこで、立ち去ることも出来た。

でも、やっぱりちょっと様子が変だ。

選択する。
さらに一歩踏み出そう。

もう一度声をかけた。
「本当に大丈夫ですか?」

そしたら、
「わー」と大声を出されて
払い退けられてしまった。

ああ、しまった。こういうときの
声のかけ方間違えたのかな。
どうしたらいいかわからない。

もしかしたら、
ただ単にセンスが独特な方で
知らない男の人にいきなり心配されたことに
腹をたてたのかもしれない。

僕は2回声をかけたけど、
それ以上はどうしたらいいかわからない。
もうやれることはない。

そう思って立ち去ろうとした。

でも、氣になる。

本当にそれでいいの?

選択する。
さらにもう一歩踏み込もう。

去った方向に歩いていくと、
途中で見つけた。
一人で喋ってて、
どうも様子がおかしい。

でも僕だと対応がわからない。
きっと誰かがなんとかするだろう。
ここまで見にきただけでもよくやったよ。

それでいいの?

選択する。
さらにもう一歩前に行こう。

相談するために交番に行った。

そしたら、巡回中でいなかった。

警察もいないならしょうがない。
やるだけのことはやったよ。

それでいいの?

選択する。
さらに、さらにもう一歩!

交番には直通の電話機があった。

受話器をとり、
状況を伝えた。

どうも様子がおかしてく
雨も降ってきてるので心配だ。
だけど、僕は力不足で
どうしたらいいかわからない。

わかりました。人を向かわせます。

と答えてくれた。

そこまで踏み込んだ。

結局
そのあとは見失ってしまって
わからなくなった。
無事に帰れたらいいのだけど。


今回、もし、
僕の心配したような人でなかったら
非常に失礼なことを
したことになるかもしれない。

でも、
本当に困っている人だったら。

そう思って、踏み込んだ。

一歩で止めず、
もう一歩、そしてもう一歩。
そしてさらにもう一歩。

10回お節介になったとしても
1回誰かを救う手助けになれるなら

僕はまたもう一歩を踏み出すつもりだ。