275【惰性】

拳法をやってたとき、毎日、突き、蹴りの練習をしていた。前拳30本!胴突き50本!とかやるわけだ。「イチ!」『エイ!』「ニ!」『エイ!』「サン!」『エイ!』数える声が聞こえた瞬間に突く。そのときに意識していたのは掛け声がかかってから突く、ということだ。あくまでも聞いてから突く。リズムに流されてはいけない。反応の練習にもなるからだ。だから私が数える時は、時々あえて、次の数字を数えないようにした。

そしたら後輩は、

まだ私が言ってないのに

『エイ!』と突いてしまったり、

ピクッと動いたりしてしまう。

その瞬間

「集中しろ!」

と怒鳴ったものだ。

何十本とやってると

だんだん一本の価値が薄れて

「何十本の中の一本」になってしまう。

でも、試合では

その「一本」で勝負が決まる。

惰性でやらない。

繰り返しやることこそ

その瞬間瞬間を

その一本一本を

真剣に。

#フォーチュンギフト