296【ビートルズ】 

バックパッカーでヴェトナムを放浪していたとき、ホイアンという街で、チケットトラブルに見舞われた。そのとき、対応してくれた観光窓口にいた青年と、仲良くなった。彼は翌日仕事のない時間に、ホイアンの街を案内してくれた。現地の人しか行かないお店でご飯を食べたり、ビーチにある高級ホテルの部屋を訪れてお金持ち体験して遊んだり。プラベートプールで僕の帽子をかぶってデジカメで撮った写真を、写真屋で現像して喜んでいた。仕事のあとに、また合流して一緒にビールを飲んだ。

彼はうちに招待してくれた。

彼のバイクの後ろに乗って

片道30分くらい。

バイクの後ろに乗りながら、

一緒に歌を歌おうとなった。

お互いの国の曲などわからない。

どの曲なら知ってるかな。

そして行き着いたのがビートルズ。

二人とも歌詞はよくわからない。

「イエスタデイー、フンフンフンフー♪」

「レットイットビー、レトビー、トレビー、レトビー、フンフンフンフー、レトビー♪」

みたいなね。

僕という日本の青年と、

彼というヴェトナムの青年。

同じ曲でつながれたことに

感動を覚えた。

翌日、僕がダナンの街に行く時、

1時間以上かけてバイクで送ってくれた。

ガソリン代はいらないと言ってくれた。

僕は日本からかぶってきた

帽子をプレゼントした。

彼の夢は、

タイに行くことだと言っていた。

日本からタイに行くのは、

行こうと思えば行ける。

僕もその旅のあと行った。

でも彼にとっては

お金を貯めて

いつか、タイに旅行に行く。

それは現実の延長にはないこと

だったんだ。

一ヶ月の給料が、日本円で3000円だった。

グエンと言ったかな。

底抜けにいい人だった。

まだSNSやメールアドレスを

みんなが持ってない時代

連絡先はわからない。

元氣でやっていることを、

夢が叶っていることを願う。

彼と歌ったビートルズが

今でも耳に残っている。

#フォーチュンギフト