334【日食グラス】

2012年5月、日本で金環日食を観測することができて、盛り上がった。太陽を直接見ると目を痛めるので、日食グラスが売られていた。僕も仕事で、それを仕入れてネットで売っていた。日食が近づくにつれ、どんどん売れていって、やがて確保した在庫はなくなった。直前になるとだんだん値段も高騰していって、もっとたくさん仕入れておけば高値で売れたのに。と残念がったのを覚えている。

だけど、お父さんは違った。

お父さんは天体とかが好きで、

そのとき東京のほうがよく見えるからと

札幌からわざわざ

そのためだけに見にきた。

そのとき、

手作りの日食グラスを持ってきた。

紙で作ったフレームに

遮光フィルムを入れ込んだ

単純なものだけど

日食を見るには十分だ。

お父さんはこれを

中学校の授業で

生徒と一緒に作ったという。

子どもたちが

天体ショーを見る貴重な機会を

与えるために。

そして、その生徒たちの分だけでなく

1200個くらい作って

近隣の小中学校に無料で配ってたんだ。

僕は今回のことでは

自分の利益のことしか

考えてなかったのに。

その横で

お父さんは、

子どもたちがこの金環日食を

楽しめるようにと

それだけを考えて

手作りの日食グラスを作って

配ってたんだ。

偉大に思った。

#フォーチュンギフト