345【体育会のお決まり】

大学時代、体育会の部活に入ってた。体育会ってさ、理不尽なこともあるんだけど、慣れてくると暗黙のルールというか、お決まりのやり取りってものがあるのね。それをわかってくると楽しめるようになってくる。
4年生の夏合宿、複数の大学との合同合宿だった。色んな大学のOB先輩が来た。
 
午後練が終わって晩御飯を食べたあと
OB先輩たちから招集がかかった。
 
3,4年は集まれーって。
 
先輩の部屋で、今から宴会が始まるわけだ。
 
ある酒好きなOB先輩が
日本酒の一升瓶をドンッ!
と置いて一言
「OBと現役で飲み比べしようやー」
 
おっと!来ましたー!
 
最初はどうしようかと思うけど
このときの対応には正解がある。
 
体育会の面白さは、
どれだけお決まりの茶番を
楽しく演じられるかによる。
 
OB先輩は本当に飲み比べしたくて
言ってるんじゃないくて
学生が飲んでるのを見るのが楽しいんだ。
 
というわけで、
こう答える。
「押忍、先輩。
先輩と飲み比べだなんてそんな。
自分らで飲ませていただきます!」
 
一列に並んで
端から一升瓶を回し飲みしていく。
もちろんコップなどはない。
ラッパ飲みである。
 
そして、飲み方にも答えがある。
 
最後の一人で少し残すんだ。
 
この残し加減が重要で
残し過ぎても、ダメだ。
 
ちょっとだけ残して
「すいません!
飲みきれませんでしたー!
負けましたー!」
って言って
「ガッハッハ、情けねーなー。
でもよく頑張った。」
みたい感じで終わるわけだ。
 
ところが!
 
そこで事件が起こった。
 
最後から二人目のやつが
何を思ったか全部飲み干してしまった。
 
「おいおい!!」と
心の中で叫ぶ。
お約束の流れが出来ねーじゃないか!
 
OB先輩も、
無くなったもんはしょうがない。
 
「足りなかったようだな」
と、もう1本、一升瓶を出してきた。
 
これ多分
後で飲もうと思ってたやつだろうなー。
 
しょうがないので2周目に入る。
 
そうなるともう酔いすぎてて
誰も何もわからなくなる。
最後にちょっと残す流れとかは吹き飛ぶ。
 
勢いにまかせて
2本目も空けてしまったので
あとで先輩が飲むはずだったであろう
ウイスキーとかが出てくる。
 
 
全員ベロベロになって解散。
本能でこのまま寝るとヤバい!と思い
水道の水をがぶ飲みして
胃の中を中和してから吐く。
また水飲んで吐く。
 
のちに聞いた話しでは
後輩たちは布団に入りながら
3,4年の先輩が夜中中吐いてる声を聞いて
来年はああなるのかと
怖くて震えていたそうだ。
 
 
次の日は完全なる二日酔い。
 
朝日さす美しい浜辺を
ランニングしながら
海に向かって吐く。
 
午前練もまだ酒が残ってて気持ち悪い。
 
昼飯食べて
午睡して
午後の練習でやっと酒が抜けて
防具練でボコスカ殴って
そして夜になると、
よっしゃ飲むかー!の繰り返し。
 
そんな合宿。
 
 
あのときは大変だったし
あの時代だから
出来てたこともあるだろう。
 
今振り返ると
体育会でしか味わえないあの出来事たちは
貴重な思い出として胸に刻まれている。
 
 
#フォーチュンギフト