戦後まもなく生み出された壺井栄氏の小説『二十四の瞳』という素晴らしい名作。その中のある一文が、僕の中に残った。
「空腹はキツネうどんの味を数倍にしてコトエの舌にやきついていた。」
僕はこの一文に心を奪われた。こんなに美しい表現で美味しさを表すことが出来るんだ。
そして、僕は小説の中身とは全く違う
氣づきをその文から感じたんだ。
どんなに美味しい料理を作ろうとしても、
味を二倍にすることは難しい。
でも、空腹なら何倍にもしてくれる。
料理に目を向けずに
空腹に目を向ける。
求めるものは
それを突き詰めて昇華するより
違う視点で、
違う道から手を伸ばすことで
ときに簡単に
辿り着くことが出来るんだ。
ただ一文での完成された美しさと
深い氣づき。
心に残るこんな文章を
僕も生み出していこう。