344【地下室】

高校のとき、友達とよく家の前で集まって遊んでいた。あるときお酒飲んで騒いでたら、うるさかったんだろう。通報されたようで、警察が来た。友達は逃げおおせたが僕だけ捕まった。家の前で捕まったもんだから、親を呼べ。と言われて、仕方なく寝室で寝ていた父を起こして出てきてもらった。警察もめんどくさかったのか、父が出てくると、「あ、どうも、お父さん。あとお願いしますね。」とさっさと行っちゃった。

僕はさすがに怒られるかなー、と思っていたら

父から思わぬ一言。

「崇史、今度からは地下室を使いなさい」

その日から、

家の地下室が僕らの溜まり場になった。

お父さんの工具や実験道具が

ひしめく地下室は

どんだけ騒いでも音がもれない。

週末の夜は崇史家地下集合。

それを合言葉に

金曜の夜に集まって

土曜の朝6時まで遊んで帰る。

土曜の夜また集まって

日曜の朝6時に帰る。

仲間と深い時間を過ごした。

恋愛のこと、友情のこと、

人生のこと、哲学のこと、

なんでも語り合った。

ビデオ撮影したり

お笑い作ったり

ボードゲームしたり

鍋やったり。

青春の溜まり場。

思春期に、

こういう場所があったことは

よかったなー。

#フォーチュンギフト

343【スーパー】

父が長く生きられないとわかってからのある日、一緒にスーパーに買い物に行った。「きゅうりどれにする?」「お豆腐は買う?」「お菓子買っていいよ。」僕は父の後ろを買い物かごを持って歩きながら、涙が出た。父に泣いてるのがバレないよう涙を拭って、買い物を続けた。

なんて幸せなんだろう!

氣づかなかった。

家族とスーパーで買い物する、

ただそれだけのこの何気ない日常が

こんなにも幸せに溢れているなんて。

#フォーチュンギフト

342【ニセコスキー】

毎年大晦日から1月2日までの3日間は、河端家恒例のスキー旅行だった。おじいちゃんの兄弟、子ども、孫、友達など河端一族30〜50人で参加。大型バスを貸し切って北海道のニセコひらふの山田温泉旅館に泊まりに行った。おじいちゃんが年を取って行けなくなるまで、実に40年も続いた。僕も0歳から年末年始はニセコだったから、20歳くらいでそれが終わった時、正月をどう過ごしていいかわからなかった。

昼前におじいちゃんの家に集合して

大型バスで出発。

中山峠でうどん食べて

バスの中では恒例のビンゴ大会。

旅館の大広間の

二重になってる窓の隙間に

窓一面のビール缶を積み上げて

それが3日間でみるみる減っていく。

子どもたち用にビニル袋に

100円玉がじゃらじゃら入ってて

その3日間は下の売店で

お菓子とジュース買い放題。

大晦日の夜は紅白もほどほどに

ナイタースキーに出かけて

年越しの瞬間は松明スキーでカウントダウン。

ホテルに戻ると樽酒が開いててまた飲んで。

旅館の大広間を貸し切って

夜はみんなで雑魚寝。

男も女も赤ちゃんも年輩も、

全員で布団並べて寝てた。

正月は一番上の第7リフトから

スキー担いで頂上まで登って

誰も滑ってない

完全なパウダースノーの深雪を滑走。

ほぼ吹雪いていたけど

5年に一度くらい、羊蹄山が綺麗に見えた。

ニセコひらふは世界に誇れる山だと思った。

そして今実際そうなった。

吹雪のときはくっついて滑って

第六の壁を繰り返し滑って

昼ごろ山小屋に集合してランチ食べて。

持ってきた樽酒飲んで

夜まで滑って酒飲んで。

帰る前には

「第○○回 河端ファミリースキー」

って横断幕用意して集合写真。

やがて「陽だまりスキー」と名前を変えた。

そんな河端家。

ほんと僕は

この陽だまりの中で育った。

あったたかかったなー。

スキーツアーは今は

やらなくなってしまったけれど

僕の関わる子どもたちにも

あの陽だまりを体験させてあげたい。

#フォーチュンギフト

341【理想の父】

父が亡くなる30分ほど前に、僕は父に話しかけた。「ねぇ、お父さん、4月にふるかわに行ったとき、お父さんは僕にこう言ってくれたよね。

『お父さんは、崇史の幸せのためなら、どんなことでも受け入れるよ。』って。

あの台詞はさ、世界中の子どもたちが、親に言ってもらいたい台詞だよ。あの言葉を言われたいけど言ってもらえなくて、親子関係に苦しんでる人たちがいっぱいいるよ。お父さんは、世界中の子どもの理想の父親だよ。そんなお父さんのもとで生まれて、僕は幸せだったよ。」

亡くなる瞬間まで意識があったと思うから

この言葉は届いていたはずだ。

父は理想の父親そのものの人だった。

僕はこれから

父が教えてくれたことを伝えていこう。

父のストーリーが

誰かの力になることで

パワーストーリーとして

父は生きていくんだ。

#フォーチュンギフト

340【モーニングルーティーン】

毎朝、起きたらすぐにやること。

カーテンを開けて太陽に向かって拝む

「天の神様、ありがとう」

流水紋に向かって拝む

「水の神様、ありがとう」

足の裏に大地を感じて拝む

「大地の神様、ありがとう」

北の方角へ向かって拝む

「お父さん、お母さん、育ててくれてありがとう。」

ご先祖様へ拝む

「命を繋いできてくれてありがとう」

関わってくれた人たちに拝む

「今の私があるのはあなたとの関わりのおかげです。ありがとう」

両手を自分に回してセルフラブ

「よく起きた!昨日も頑張ったね。大丈夫!僕がついてるよ。どんなことがあっても僕は味方だよ。僕がいるよ。僕がついてるよ。目も耳も鼻も口も、手も足も、よく動いてくれてるね。大好きだよ。愛してるよ。ありがとう」

そうして朝を始める。

始めは、

朝起きて陽の光を浴びると

身体が起きてくると聞いて

やりだした。

陽を浴びるうちいつしか、

太陽を拝むようになった。

天(火)を拝むなら水もだろう。

天(空)を拝むなら大地もだろう。

そして自然と家族に祈り

ヒロさんの動画で先祖を敬い

日本メンタルヘルス協会の教えで

セルフラブをするようになった。

1日の始まりが

感謝から始められるようになった。

1日やっただけでは

変わらないかもしれないけど

何年も続けていると

だんだんと心が変わってくるんだ。

祈りと感謝から始まる1日。

今日も最幸。

#フォーチュンギフト

339【文化芸術】

大学生のとき、お父さんが、送ってくれている仕送りと別に、お金をくれた。「このお金は、文化芸術に使いなさい。食べたり飲んだりに使うんじゃないよ。東京にはたくさんの美術館や、博物館、お芝居や映画館がある。別で管理して、そういうものに使いなさい」と。

僕はそのお金でダンスやオペラ、絵画や能を見に行った。

初めて知る一流の世界。

若い僕に教養と体験を与えてくれた。

縛ってくれたお金だったからよかった。

そうじゃなかったら

東京に出てきたばかりの大学生だ。

無駄遣いして消えてしまっていた。

今でも文化芸術には

定期的に触れるようにしている。

あのとき、お父さんが伝えてくれたことは

確実に人生を深く、豊かにしてくれている。

#フォーチュンギフト

338【父と子】

お父さんが主催する科学の祭典に行ってきた。子どもたちに科学の楽しさを伝えるイベントで、100人くらいの子どもたちが、目を輝かせて、自分の好きなブースを巡って楽しんでいた。子どもたちの好奇心を満たす、素晴らしいイベントだった。10年くらい前からやっているそうだったけど、行ったことはなかったので、初めて見に行った。

お父さんは電気と磁力の話や

電気分解の実演をしていた。

僕はその姿をみて驚いた。

僕と同じだ!

お父さんは教師なので、

毎日こうやって授業してたわけだけど

そういえば僕は

お父さんの授業風景は

生で見たことはなかった。

初めて見たその姿は

僕が歴史朝活でやっているのと

そっくりだった。

見たことなかったのに

自然と

お父さんと

おんなじことをやってたんだ。

親子って

繋がってるんだ。

#フォーチュンギフト

337【空白の証言】

長崎の原爆死没者追悼平和記念館に行ってきた。長崎原爆資料館の隣にひっそりと建っていた。そこにある手記が展示してあった。原爆の悲惨さを後世に残すために、長年被爆者の証言を集めている。だけど、どれだけ集めても爆心地の証言だけは、永遠に空白のままなんだと。

そうか、誰も生き残っていないから

命とともに永遠に失われたんだ。

戦争が終わってもう、

約3世代の世が過ぎた。

今後、同じ年月、ひ孫の代まで

再び戦争が起こらないでいられるだろうか。

未来に望むのは

もう空白が生まれないこと。

いや、逆だな。

全部が空白で

集めなければならない悲惨な証言が

元から生まれない世界。

そのためにはどうか

相手を受け入れ

隣人を愛そう。

#フォーチュンギフト

336【マンホール】

街中にあるマンホール。よく見ると、デザインが色々ある。シンプルなダイヤモンドパターンや、T字パターン、その街のロゴマークをデザインしたものまで。ある雨の日、マンホールで滑りかけた。濡れたマンホールって滑るんだ。でも、その模様の凹凸のおかげで助かった。そっか。シンプルな十字にしないで、ダイヤモンド型や変則のギザギザにするのは、色んな方向から滑りにくいからか。

そして、その機能を維持した中で、

見た目も楽しませる

色んなデザインを

生み出してる人がいるんだ。

安全性とデザイン性。

街の人を想う優しさの円が

道に溢れていると思うと

歩いてて楽しくなる。

#フォーチュンギフト

335【頑張ったね】

よさこいがひと段落した折に、お母さんに電話した。よさこいに出逢わせてくれたのはお母さんなんだ。だから、こんなに楽しいよさこいにハマるきっかけをくれてありがとう。ってお礼を伝えた。そしたら、お母さんに「崇史頑張ったね」って言われた。頑張った?え?頑張ってないよ?と思った。けど「頑張ったしょ」って言われた。

へぇー、そっか

周りから見るとそう見えるのか!

確かに、毎週土日は

よさこいに費やしてきた。

家から片道1時間半かけて

練習会場に行って、

汗だくになって練習して、

夜遅く帰ってきて、

衣装洗濯して。

ビデオみ見て

上手い人と自分の振り比べて

タイミング確認して。

小道具の練習して、

衣装縫って、

100mの糸使い切ってもまだ縫って。

ストレッチして、

ストレッチの店にも通って。

側から見たら頑張ったてたかも。

でも頑張ってると思ってなかった。

前にイチローが

「人には努力に見える

でも自分にとってはそうじゃない」

という状態について語ってた。

それだったのかもな。

頑張ったかもしれないけど、

頑張ってないんだ。

楽しかったんだ。

#フォーチュンギフト